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クラッチ

愛車デュオグライドのクラッチのスベリが最近激しい。

正常な走行が困難になる一歩手前まで来たようで、友人でもあり環八沿いでショップ「ラブ・マシーン」を経営するヘッタちゃんに修理を頼んだのが、しばらくは入庫が多くてすぐにはできないということで彼のアーリーライダース時代の後輩である大磯の「HILIGHT」の鈴木さんことスーさんを紹介してくれた。  

 「HILIGHT」はいわゆる修理専門のショップだ。私もいろんな店に遊びにいくが、実際自分のバイクを預ける店を開拓するのは始めての事。

 売り物がずらりと並んでいて、買ったあとのメンテナンスも保険もレッカーもなんでもOKな巨大な資本を元にたくさんの人相手に商売をしている昨今だが、彼のお店はお世辞にも綺麗とは言えない、まさにウィリアム・ハーレーとウォルター・ダビッドソンが1905年に創業したときに借りたような田園地帯の農機具置き場のような場所でのんびり口コミでやって来た人のマシンの面倒をみている。

 まず最初に症状を確認してもらうために店に行ったが、その前の道路を3往復してやっとそこに店があることに気づくほど地味な概観のショップだ。だが、店の雰囲気と彼の人柄はとてもよく、その日のうちにパーツの注文と翌週作業をしてもらうことを約束し車両を置いて帰ることに何の躊躇もなかった。

 翌週お店に行くと、スーさんがもうトランスミッションを途中までバラしていた。さて、ここから作業開始だ。とは言っても私は横で彼の手さばきを見物するだけだが。 クラッチ切れの悪さの原因はすぐに分かった。

 チェーンの著しいノビとガタ。それとプッシュロッドアジャストスクリューの締めすぎだ。
 クラッチ板はまだまだ全然使大丈夫・・・と部位を順番にチェックしていくが、それにしてもプライマリーカバー内の汚れがすごい。

 「ヘドロのようですね・・・。」とスーさんも呆れている。プライマリーケースを開けて内部の洗浄をDIYでやる旧車オーナーは結構多い。私も見習わなければ。

 その後、クラッチ板やシェルカバー、ハブなども分解して綺麗に灯油やパーツクリーナーで洗浄しながらひとつひとつパーツの磨耗具合をチェックしていった。

 コンフリクションプレートのガタはなかったが、クラッチハブのプーリーに若干傷があった。まだ使えるそうだがこれも時々チェックする必要がありそうだ。そうそう、初めて開けてみたプライマリーケースの下部に溶接痕を発見。開けてみて初めて分かる事というのも結構ある。

 次はクラッチをもう一度組上げていく。まずはハブを装着し、逆ネジのナットをインパクトで固定する。そして、その上に薄くグリスを塗り、クラッチ内部に油分が落ちないようにシェルを組み込む。

 その次に一次チェーン内のフロントスプロケットユニットを組み立て、プライマリーチェーンと一緒にケース内に押し込む。 このフロントユニットのスプリングの張力がフィーリングに影響するようで、アイドリング時にゴトゴトと違和感があるようだとここのスプリングがヘタっている場合もあるようだ。

 スプリングの張力は見た目で判断しずらい部分であり、アイドリングで異音を感じるようなら要注意だろう。

 最終的に一次チェーンの組み込むために、ミッションを前進させる。アスクルナットなどを全部緩めてフリーにし、そして位置が決まったらとうとうプライマリーチェーンユニットの完成だ!

 そして次はいよいよクラッチを組み立てる。クラッチプレートを順番に装着していき、プレッシャープレート、スプリングカラーを取り付ける。ここもスプリングの調整値があり、スプリングカラーのアウターディクスの間を1インチにするするよう純正マニュアルに記載されているが、スーさんいわく、スプリングの個体差があるためクラッチの切れ具合を見ながら臨機応変にテンションを調整するほうがよいそうだ。 

ちなみに私の調整は締めすぎだった。ノギスで測ってバッチリと思っていたが、なかなかマニュアルで一律というようにうまくいかないのがこのアナログな世界。いやー勉強になるよ、コレ。

 最後にマウストラップとクラッチの遊びの調整を行う。もともと車のように手でクラッチレバーを操作するハンドクラッチの構造をフットクラッチに変換しているこの時代のクラッチコントロールの構造は、とても複雑でスーさんが作業している横で見ていても複数のスリーブとどのスクリューをどういじって調子を出しているのかがよく分からなかった。

 マニュアルにはここの遊びを何インチくらいに調整しろとマニュアルには書いてあるのだけど、旧車の整備は感覚に頼る部分が多く、ここは整備士さん頼りなところ。もちろん乗る人にとってもいい状態を体で覚えておくことはとても重要なところで、感覚はいいバイクに乗ることでしか鍛えられないので、私はミーティングなどでコンディションのいいバイクがあると、音を十分聞かせてもらったり、乗せてもらったりしている。やはり自分の体で感じるパルスというのは別物で、よく整備された旧車は、そうでないものと100倍以上の感覚の開きがある。

 さて、スーさんが試走しながら調整した後に自分のデュオに乗ってみたが、テイストが全く別物になっていた。もともとドライブ部分を調整するだけで劇的に乗り味が変わりやすいバイクだが、ここまでフィーリングが良くなったのは本当に久しぶりだ。 「スーさん、グッドジョブ!あんたはマジに最高だよ!」

 という気持ちをクールに押し殺しつつ、初めてのショップだったので、作業終了後の請求書に何て書いてあるか、ドキドキしながら精算をしてもらったが、料金のほうはとってもチープスリルでこれまた最高でした!ありがとう、また絶対お世話になりまーす!


(クラブハーレー 2007年3月号に掲載)

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